Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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すさのおのみこと

素戔嗚尊

芥川 竜之介

Lee 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 42.917 caracteres · 86 pantallas

Aozora Bunko

沢も芽ぐんだ蘆と共に、彼の寂寥を慰むべく、仄かに暖い春の雲を物静な水に映していた。藪木の交る針金雀花、熊笹の中から飛び立つ雉子、それから深い谷川の水光りを乱す鮎の群、――彼はほとんど至る所に、仲間の若者たちの間には感じられない、安息と平和とを見出した。そこには愛憎の差別はなかった、すべて平等に日の光と微風との幸福に浴していた。しかし――しかし彼は人間であった。

時々彼が谷川の石の上に、水を掠めて去来する岩燕を眺めていると、あるいは山峡の辛夷の下に、蜜に酔って飛びも出来ない虻の羽音を聞いていると、何とも云いようのない寂しさが突然彼を襲う事があった。彼はその寂しさが、どこから来るのだかわからなかった。ただ、それが何年か前に、母を失った時の悲しみと似ているような気もちだけがした。彼はその当座どこへ行っても、当然そこにいるべき母のいない事を見せられると、必ず落莫たる空虚の感じに圧倒されるのが常であった。その悲しみに比べると、今の彼の寂しさが、より強いものとは思われなかった。が、一人の母を恋い歎くより、より大きいと云う心もちはあった。だから彼は山間の春の中に、鳥や獣のごとくさまよいながら、幸福と共に不可解な不幸をも味わずにはいられなかった。