Clásicos japoneses con furigana
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すさのおのみこと
素戔嗚尊
Lee 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 42.917 caracteres · 86 pantallas
空には暈のかかった月が、無気味なくらいぼんやり蒼ざめていた。森の木々もその空に、暗枝をさし交せて、ひっそり谷を封じたまま、何か凶事が起るのを待ち構えているようであった。が、彼は何も見ず、何も聞かずに走り続けた。熊笹は露を振いながら、あたかも彼を埋めようとするごとく、どこまで行っても浪を立てていた。時々夜鳥がその中から、翼に薄い燐光を帯びて、風もない梢へ昇って行った。……
明け方彼は彼自身を、大きな湖の岸に見出した。湖は曇った空の下にちょうど鉛の板かと思うほど、波一つ揚げていなかった。周囲に聳えた山々も重苦しい夏の緑の色が、わずかに人心地のついた彼には、ほとんど永久に癒やす事を知らない、憂鬱そのもののごとくに見えた。彼は岸の熊笹を分けて、乾いた砂の上に下りた。それからそこに腰を下して、寂しい水面へ眼を送った。湖には遠く一二点、かいつぶりの姿が浮んでいた。
すると彼の心には、急に悲しさがこみ上げて来た。彼は高天原の国にいた時、無数の若者を敵にしていた。それが今では、一匹の犬が、彼の死敵のすべてであった。――彼は両手に顔を埋めて、長い間大声に泣いていた。