Clásicos japoneses con furigana
ja-reading.com
Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.
きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lee 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 183.656 caracteres · 363 pantallas
その使いも今日は見えない。宿の二階から見あげると、妙義みちにつづく南の高い崖みちは薄黒い若葉に埋められている。
旅館の庭には桜のほかに青梧と槐とを多く栽えてある。痩せた梧の青い葉はまだ大きい手を拡げないが、古い槐の新しい葉は枝もたわわに伸びて、軽い風にも驚いたように顫えている。そのほかに梅と楓と躑躅と、これらが寄り集まって夏の色を緑に染めているが、これは幾分の人工を加えたもので、門を一歩出ると、自然はこの町の初夏を桜若葉で彩ろうとしていることが直ぐにうなずかれる。
雨が小歇みになると、町の子供や旅館の男が箒と松明とを持って桜の毛虫を燔いている。この桜若葉を背景にして、自転車が通る。桑を積んだ馬が行く。方々の旅館で畳替えを始める。逗留客が散歩に出る。芸妓が湯にゆく。白い鳩が餌をあさる。黒い燕が往来なかで宙返りを打つ。夜になると、蛙が鳴く、梟が鳴く。門付けの芸人が来る。碓氷川の河鹿はまだ鳴かない。
おととしの夏ここへ来たときに下磯部の松岸寺へ参詣したが、今年も散歩ながら重ねて行った。それは「どうも困ります」の陰った日で、桑畑を吹いて来るしめった風は、宿の浴衣の上にフランネルをかさねた私の肌に冷やびやと沁みる夕方であった。