Clásicos japoneses con furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lee 花と龍 (はなとりゅう) de 火野 葦平 (ひのあしへい) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 410.131 caracteres · 824 pantallas
金五郎の方は、左腕の彫青を眺めなおしながら、
(この龍が、前肢につかんでいる菊の花束、それが、マンであることを、お京は知らん)
そう思って、秘密の持つ、なんとなしの楽しさに浸っていた。
「金五郎さん」
「あん?」
「どうしても、いや?」
「女房に、相談してみる」
「馬鹿」
金五郎は、立ちあがった。
「帰るの?」
「うん」
「帰すもんかね。もし、金五郎さんが、彫青の約束を守らないなら、街中、いいふらしてやるわ。――玉井金五郎、って、このごろ売りだしかけてるけど、あれは、ほんとうは、嘘つきの、卑怯者の、男らしくない三ン下奴だ。……って」
「仕方ないよ」
「金五郎さん、待って。……そんなこというなら、殺してやる、殺して、彫青してやる」
お京は、金五郎に躍りかかった。
マンは、台所に、提灯を点した。「井上金物商」から買って来た新しい鉄の三升釜を、井戸端で、洗って、磨いた。湯をわかして置き、糠を藁タワシで、ゴシゴシ、こすりつけると、きれいに、垢と錆とが落ちる。
猫が、マンの手つきを、ものうげな眼つきで、眺めている。
柱時計が、チン、チン、チンと、鳴りはじめた。手を休めて数えると、十一、打った。