Clásicos japoneses con furigana
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ていそうもんどう
貞操問答
菊池 寛
Lee 貞操問答 (ていそうもんどう) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 200.240 caracteres · 399 pantallas
準之助氏より、十分ほど早く帰って来た新子は、和服でもありかなりひどく濡れてしまっていた。
女中達に騒がれるのを厭って、コソコソと自分の部屋へ上って来たのだけれど、いくら注意して歩いても廊下に、雫の落ちるほどあさましく濡れた我身であった。
手早く、銘仙の着物に着換え、帯もシャンと締直し、髪も手がるに束ねなおし、気を落ちつけるように机の前に、坐った。
途端に、聞き馴れたスキーパの独唱が、夫人の部屋から聞えて来た。新子の好きな、そして美沢も愛好している「グラナダ」という、古いレコードである。
何という不可思議な心理だろう。新子は、三十分前の自分の気持が、自分でも分らなかった。美沢とは、二年近い交際で、最初から好きで、だんだん愛するようになり、二人ぎりで居る機会も多かったにも拘わらず、美沢が自分の手を握ったことだって、二、三度しかないのに、……準之助氏は、さのみに愛してもいず、一言だって愛を語ったわけでもないのに、どうして、あんなに脆くも唇を許してしまったのだろうか。
新子は、自分の気持が、不可思議でならなかった。やはり、あんな大金をもらったという弱味が、いつかしら自分の心を、あの人の方に傾けていたのかしら。