Clásicos japoneses con furigana
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ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
Lee 随筆 私本太平記 (ずいひつ しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 56.947 caracteres · 114 pantallas
もひとつ、私が引かれたのは、かねがね一見をのぞんでいた菅原通済氏所蔵の足利尊氏の「清水寺願文」である。逆賊尊氏という汚名と対比して、行った人はこのさいぜひよく見ておいて欲しい。会場にもカタログにも訳文がないから、要旨をここに掲げておく。
この世は夢のごとくに候(中略)猶々、とくと遁世いたしたく候、今生の果報にかへて、後生たすけさせ給候べく候、今生の果報をば、直義(弟)にたばせ給候て、直義あんおんにまもらせ給候べく候 尊氏(花押)
湊川で楠木正成をやぶり、がいせんして光明天皇をわが手で擁立した得意絶頂のとき、彼が清水寺へ納めた願文なのである。こんなにまで愛していた弟を彼はやがて殺す。後醍醐にそむく。七百年逆賊とよばれてこの国の奈落に哭く。この一文は彼を解く一ツの鍵だ。
書風からは見得、辺幅をかざらない尊氏の人間味もうかがわれる。うそでは書けない願文だし、筆のあとだ。私は彼と対決するように睨んでいるうち、なにか悲しくなってしまった。歴史の潮頭に明滅し去った人間の子すべて“あわれ”の一語につきる。
正成の筆は、軍中状のせいもあるが、ずっとかたい。