Classiques japonais avec furigana
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おもかげしょう
おもかげ抄
山本 周五郎
Lisez おもかげ抄 (おもかげしょう) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 947 caractères · 22 écrans
一
一
「おい見ろ見ろ」
「――なんだ」
「あすこへ来る浪人を知ってるか」
「うちの店へ越して来た鎌田孫次郎てえ人だろう」
「本名はそうかも知れぬがの」
魚売り金八はにやりと笑って、「あれあおめえたいした飴ん棒だぜ」
遠州浜松の城下外れ、「猪之松」という問屋場の店先を一人の浪人が通りかかった。年の頃二十八九であろう、上背のある立派な体つきで、色の浅黒い眼の涼しい、先ずこの辺には珍しい美男だ、――街道裏にある猪之松の家作へ移って来てから十日余り、中国辺の浪人で名は鎌田孫次郎という。
「飴ん棒たあなんの事だ」
「まあ聞きねえ」
金八は煙管をはたいて、「七日ばかりめえのこった、買出しに出ようとして通りかかると、あの先生、――裏へ出て洗濯をしているじゃあねえか。お早うございますと云っちまってから、おらあ悪いことをした、見ねえ振りをして行くんだったと思っていると、相手ぁ平気なもんだ、やあ是は早々と御精が出ますな……とにやにや笑ってる。そこでおいらが、――奥さまのお加減でもお悪うございますかと訊いたんだ。するとその返辞がふるってらあ、いや別に何処が悪いと申すほどでもござらぬが、ちと我儘者でな、まあ朝寝がしたいのでござろうよ、兎角どうも女は養い難しでござる、あははははは――てえ始末だ」