Classiques japonais avec furigana
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ノンシャランどうちゅうき
ノンシャラン道中記
久生 十蘭
Lisez ノンシャラン道中記 (ノンシャランどうちゅうき) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 878 caractères · 26 écrans
進むと見ればたちまち退き、右によろめき左にのめくり、一上一下、輾転反側。さればコン吉は、手鍋の中で炒られる腸詰のごとく、座席の上で転げ廻りながら、ここを先途と蝙蝠傘に獅噛ついている様子。
雑然たる工場と、ボンボンの箱のような小住宅が雑踏する巴里の郊外地帯を離れると間もなくブウレエの石切り場にさしかかる。コン吉がこの大震動の間から、そっと偵察の目を押し開けて眺むれば、遠い野面には霜に濡れた麦の切株、玻璃鐘の帽子をかぶせたサラドの促成畑、前庭に果樹園を持った変哲もない百姓小屋、いずれも駱駝色に煤ぼけ、鳥肌立ったる冬景色。
巴里の市門イヴリイをよろめき出してから三時間あまり、もうオオゼエル村のあたりまで来たのでもあろうかと、ふと何気なく巴里の方を振り返ると、ナント、エッフェル塔は三色旗をかかげて、まだほんの間近にそびえ立っているという有様。これにはコン吉も呆れ果て、
「どうだろう、これからおいおい速力が出るという工合になるのだろうね。昼飯はオオゼエルの野菜料理屋で、名代のオムレットを喰べさせると君はいったが、もうそろそろ正午だというのに、今見たらエッフェル塔はまだ目のしたにある様子だ。