Classiques japonais avec furigana
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ノンシャランどうちゅうき
ノンシャラン道中記
久生 十蘭
Lisez ノンシャラン道中記 (ノンシャランどうちゅうき) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 878 caractères · 26 écrans
このぶんでは、巴里まで引き返して昼飯にした方が早そうだね。どうだろう」と、舌を噛まない様に用心しながら、途切れ途切れにこれだけいうと、タヌは、
「巴里に引き返すといったって、この車は前だけにしか動かないよ。お腹がすいたら、この籠の中に麺麭と牛酪が入ってるから、それでも喰べて我慢していたまえ」と、背中越しに籠を突き出してよこした。
コン吉は一切を運命とあきらめ、包をあけて麺麭にバタをぬろうとしていたが、やがて、
「タヌ君、どうだろう。麺麭にバタをぬる間だけ、ちょっと自動車をとめてもらえないだろうか。なにしろ、バタのナイフが眉間や喉へ来そうで危なくて仕様がない」
タヌは運転台の鏡の中で眉を顰めながら、
「パンを一口喰べてから、バタを指で掬ってめればいいじゃないの。君もずいぶん馬鹿ね。この車は一度停めたら、動き出すまでにはなかなかだから、停めるわけには行かないよ」
「では、バタの方はそれでいいとして、速力の方をもう少し出してもらうわけには行かないだろうか。僕はもうサラドの畑を見るのは飽き飽きした。少し変った景色も見せてもらいたいものだね」
「でも、これより出すと危ないよ」