Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ノンシャランどうちゅうき
ノンシャラン道中記
久生 十蘭
Lisez ノンシャラン道中記 (ノンシャランどうちゅうき) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 878 caractères · 26 écrans
吹く風も妙に湿って、さながら陰府からでも吹いて来たよう。このもの凄い山道を乏しい前照灯の光りだけで辿って行く心細さ、恐ろしさ。臆病未練なコン吉は、もう魂も身にそわないような心持。すると、横手の小道から、この寒空に、外套も着ず帽子もかぶらぬ、三十歳ぐらいの奇妙な男が現われて、
「いよウ」と、二人に快活な声をかけた。二人は天の助けと喜んで、サン・フロランタンへ出る道をたずねると、その男は車の扉に手を掛けて並んで歩きながら、
「なアに、じきでさ」と、事もなげに答えた。
「この道をまっすぐに行けばいいのね」と、タヌがたずねると、
「ええ、まあ、そうでしょう」という返事。
「もう一時間ぐらい?」
「なアに、じきでさ。お嬢さん、お急ぎですか」と、妙な事をいう。
「そうよ。誰れがこんな暗い山の中にいたいもんですか」すると、男はそれを聞き流して、コン吉に、
「ときに、いく時ごろだろう」と、きく。
コン吉が時計を出して、今は八時十分だ、と、おろおろしながら答えると、男はその時計をちらりと見て、
「おや、とんだ良い時計だ」と、ニヤリと笑ってから、「お前さん達は、安南人かね、支那人かね」