Classiques japonais avec furigana
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ちじょう
地上
島田 清次郎
Lisez 地上 (ちじょう) de 島田 清次郎 (しまだせいじろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 175 250 caractères · 350 écrans
彼はそうして救われるべきであった。彼一人はそうして救われるとしても、彼が犯した罪業の塊、あの年若い甥一人のために一生を捧げてそのためにはいかな罪悪も秘密も忍び終えたお信の血は、容一郎と綾子とお光との三人の生児として北野家に残されてあった。幸いにもお里は子がなかった。子のない女の寂しさは三人の子供を親身の母のように愛育した。お光は後に、お信がお里を北野家へ迎えようと主張したことを思い合わせて、何ともいえない微妙さを味わうことがあった。
しかしお光が物心がつきはじめる頃の父の容太郎の印象はそうした前生涯を通って来た人とは思われないほどに功利的でより実業的であった。容太郎はお信の死後、再生したといってよかった。長い間の奇怪な幽鬱な肉欲と蒼白な魂の感化から解放された彼に、抑制されていた英雄的な物質主義が生きて来た。憂鬱はお信のもので、彼自身のものでなかった。精悍な体躯と容貌をお光はよく記憶していた。百畳は十分敷ける広大な茶の間(天井のないその部屋の高い屋根裏を橋梁のように太い梁が走り、片隅の一間四方の囲炉裡には純銀の茶釜が黒ずんだ自在にぶら下げてあった)の正面に坐って来客に応対している父のどっしり落着いた態度はお光に忘られなかった。