Classiques japonais avec furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lisez 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) de 中里 介山 (なかざとかいざん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 120 caractères · 516 écrans
兵馬は老女の許しを得て、お松を廊下に呼び出して、
「お松どの、まことに申し兼ねるが無心がある……」
廊下で立ちながら、苦しそうにこう言いました。
「何でございます、兵馬さん」
お松は心配そうに兵馬の面を見ました。兵馬から折入ってこんな無心を言いかけるようなことは、今までにないことでありました。
「申しにくいことだけれども……」
兵馬は二度まで苦しそうに前置をして、
「急にさしせまった入用が起った故、金子を少々用立ててもらいたいが」
兵馬から苦しそうにこう言われて、お松はかえって安心した様子であります。安心したのみならず、兵馬からこんな無心を言いかけられたことを、かえって嬉しく思うように見えました。
「わたしの持っているだけで、御用に立ちますならば……」
「それが大金というほどではないけれど、差当り少しばかり余分に欲しいのじゃ、二十両ほど」
「二十両」
お松は繰返して、これも当惑の色が現われました。
「わたしの持っているのが、今、十両ほどありますけれど……」
「拙者は、僅かに二三両しか持合せがないので困っている」
「どうしましょうね。わたしのを差上げてまだ、大へんに足りないんでございますね、困りました」