Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

てんしゅかくのおと

天主閣の音

国枝 史郎

Lisez 天主閣の音 (てんしゅかくのおと) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 38 941 caractères · 79 écrans

Aozora Bunko

思わず九兵衛は小鬢を掻いた。

「小鬢を掻くにやァ当らねえ。さっさと這入っていらっしゃい。が門からは這入れねえ。門へ障ったら龕燈返しだ。那落の底へお陀仏だ。壁だ壁だ壁から這入りねえ。ようがすかい、向って右だ。その壁へ体を押つ付けなせえ。それからお眼を瞑るんで。開いたが最後大怪我をする。……物事早いが当世だ。さあさあ体を押つ付けなせえ」香具師の声が復聞えた。そうして其声には魅力があった。逆らうことが出来なかった。そこで九兵衛は云われるままに、体を壁に押つ付けた。そうして固く眼を瞑った。すると其壁に蛸の疣があって彼の体へ吸い付いたかのように、ピッタリ壁が吸い付いた。と思った其途端、彼は家の内へ引き込まれた。

「もう可うがす。眼を開いたり」

云われて九兵衛は眼を開いた。香具師が笑い乍ら坐っていた。

部屋の内を見廻わして、九兵衛は思わず眼を見張った。何に彼は驚いたのか? 部屋の様子が余りにも、乱雑を極めていたからであった。部屋は二つに仕切られていた。手前の部屋から説明しよう。その部屋は三方板壁であった。形から云えば真四角で、簀子張りの八畳敷で、その点から云う時は、変った所も無いのであるが、天井から様々の綱や糸や、棒や鉄棒が釣り下げられていた。