Classiques japonais avec furigana
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しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
Lisez 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 83 234 caractères · 160 écrans
左大臣が権勢を恣にしていた間こそ、彼女も本院の北の方として多くの人の崇敬を集め、羨望の的となっていたであろうが、左大臣の死後は、恐らく昔日の栄華も一朝の夢と化して、萬事に不如意を喞つ身の上となったであろう。彼女に凄じい熱情を注いだ男たちが次々に死に、左大臣の一家一門が菅丞相の祟りに依って一人々々斃れ、最後にいとし子の敦忠までが取られて行ったのを見ては、彼女もそゞろに無常の風が身に沁みたであろう。
だが、滋幹は、そんなに母と云うものに憧れつゞけながら、どうして彼女に近寄ろうとしなかったのであろうか。左大臣の存生中は兎も角も、大臣が卒去してからは、逢うのに格別の支障もないように思えるけれども、敦忠をさえ避けるようにしていたとすれば、まして母を訪うことなどは、彼の地位として差控えなければならなかったのであろうか。それについて滋幹の日記は云う、―――自分は十一二歳の頃、幾度か母に逢いたいと云う望みを洩らしたことがあったが、世間のことはそう簡単に行くものではありませぬ、お母さまはもう餘所のお家の人なのですと、そのつど乳人に戒められた。お母さまはもうあなた様のお母さまではなくて、われ/\よりは身分の高いお方のお母さまなのですと、乳人はそうも云って聞かした。