Classiques japonais avec furigana
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たんていやわ
探偵夜話
岡本 綺堂
Lisez 探偵夜話 (たんていやわ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 140 363 caractères · 277 écrans
しかし僕の父は一言のもとにそれを言破ってしまった。
「なんの馬鹿な、急所でも咬まれたら知らぬこと。足をちっと咬まれたぐらいで、人間ひとりが死んでたまるものか。」
田崎の小父さんもしいてそれに反対しなかった。実をいうと、僕も二、三年前に右の足を野良犬に咬まれたことがある。しかし五、六日の後にはすっかり癒ってしまって、こうして平気で生きている。それを思うと尼が犬に咬み殺されたというのはどうも嘘らしいと、僕もひそかに父の意見に賛成していた。田崎の小父さんが帰ったあとで、父は家内の者にこんなことを言った。
「隣り村でもやっぱり馬鹿なことを言っているらしい。今に見ろ、ほんとうの罪人があらわれてびっくりするから。」
果たしてそれから十日あまりの後に、村の若い者が二人まで拘引された。一人は喜蔵、ひとりは重太郎といって、人間は悪い者ではないが、酒の上がよくない上に、身持ちも治まらない道楽者であった。かれらはかつて酒に酔った勢いで、夜ふけに尼の堂を襲いに行ったいたずら者の仲間であった。そればかりでなく、重太郎は現場に有力な証拠品を遺していたということが、この時はじめてはっきりした。