Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

たきぐち

滝口

山本 周五郎

Lisez 滝口 (たきぐち) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 49 815 caractères · 99 écrans

Aozora Bunko

九

老人はもういちど会釈し、笠をかぶって去っていった。

九

「いやな方、思いだし笑いなんかなすって」おりうは酌をしながら云った、「なにかいいことでもあったんでしょ」

「おりうも飲めよ、今夜は話があるんだ」

「珍らしいこと」おりうはすぐに盃を持ち、上眼づかいに安宅を見た、「やっぱりなにかいいことがあったのね」

「いいかわるいかはおりうしだいだ」

そう云いながら、安宅が酌をしてやった。おりうは神妙に、いただきますと云って一と口啜ってから、安宅の言葉を聞き咎めた。

「あたししだいって、――こわいようなこと仰しゃらないで」

「いつか袖ヶ崎へいこうと云ったな」

おりうは安宅の眼をみつめてから、ゆっくりと頷いた。

「四五日うちにゆこう」と安宅が云った、「もちろん泊りがけでだ」

おりうは安宅の眼をみつめたまま、ちょっと息を詰め、そして静かにきき返した、「――それ、本気で仰しゃるんですか」

「いやならむりにとは云わないよ」

おりうは俯向いて酒を啜った。

「こわいわ、あたし」

「むりにゆこうと云うんじゃないんだよ」

「そうじゃないんです、ゆくのがいやじゃないんです」おりうの声はふるえた、「あたしのほうからお願いしたくらいですもの、伴れていっていただけるのはうれしいんです、本当とは思えないくらいうれしいんです」