Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しんじゅふじん

真珠夫人

菊池 寛

Lisez 真珠夫人 (しんじゅふじん) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 289 296 caractères · 578 écrans

Aozora Bunko

三

青年は、それを受け取ろうとして、両手を出そうとしたが、彼の手はもう彼の思うようには、動きそうにもなかった。

「一体、此の鞄を何うするのです。」

青年は、何か答えようとして、口を動かした。が、言葉の代りに出たものは、先刻の吐血の名残りらしい少量の血であった。

「開けるのですか。開けるのですか。」

青年は肯こうとした。が、それも肯こうとする意志だけを示したのに、過ぎなかった。信一郎は鞄を開けにかゝった。が、それには鍵がかゝっていると見え、容易には開かなかった。が、此場合瀕死の重傷者に、鍵の在処を尋ねるなどは、余りに心ないことだった。信一郎は、満身の力を振って、捻じ開けた。金物に付いて、革がベリ/\と、二三寸引き裂かれた。

三

「何を出すのです。何を出すのです。」

信一郎は、薬品をでも、取り出すのであろうと思って訊いた。が、青年の答は意外だった。

「雑記帳を。」青年の声は、かすかに咽喉を洩れると、云う程度に過ぎなかった。

「ノート?」信一郎は、不審りながら、鞄を掻き廻した。いかにも鞄の底に、三帖綴の大学ノートを入れてあるのを見出した。

青年は、眼で肯いた。彼は手を出して、それを取った。