Classiques japonais avec furigana
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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
Lisez 真珠夫人 (しんじゅふじん) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 289 296 caractères · 578 écrans
五
女中は声を挙げて別荘番の老爺を呼んだけれども、風雨の音に遮られて、別荘番の家までは、届かないらしかった。
ベリ/\と云う廂の飛ぶ音は、尚続いた。その度に、家がグラ/\と今にも吹き飛ばされそうに揺いだ。
丁度、此の時であった。瑠璃子の心が、不安と恐怖のどん底に陥って、藁にでも縋り付きたいように思っている時だった。凄じい風雨の音にも紛れない、勇ましい自動車の警笛が、暗い闇を衝いてかすかに/\聞えて来た。
「あゝお帰りになった!」瑠璃子は甦えったように、思わず歓喜に近い声を挙げた。その声には、夫に対する妻としての信頼と愛とが籠っていることを否定することが出来なかった。
五
風雨の烈しい音にも消されずに、警笛の響は忽ちに近づいた。門内の闇がパッと明るく照されて、その光の裡に雨が銀糸を列ねたように降っていた。
瑠璃子と女中達二人とは、その燦然と輝く自動車の頭光に吸われたように、玄関へ馳け付けた。
微醺を帯びた勝平は、その赤い巨きい顔に、暴風雨などは、少しも心に止めていないような、悠然たる微笑を湛えながら、のっそりと車から降りた。
「お帰りなさいまし、まあ大変でございましたでしょうね。