Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(一) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 246 214 caractères · 495 écrans
……で、彼もあわててその三ツ指へ礼儀を返した。
「お待ち」
守時は、姫だけを、その座にとどめて。
「高氏どの。妹です。お見知りおきを」
「おう、お妹君で」
「登子。なぜごあいさつをせぬ」
「はい。……」
「そなたも常によう話には伺うておる足利殿の御子息じゃ。存じておろうがの」
いわれないでも、初めから、姫はなにか羞恥い顔におかしさを紛せている姿だった。高氏はいそいで、もいちど、辞儀をし直した。
「や。申しおくれました。高氏です」
「わたくしこそ。……守時の妹、登子と申しまする」
「御当家へ参じたのは、今朝が初めてですのに、どうして、高氏を御存じなので」
「お従弟さまが、ようお噂をなされますゆえ」
「え? 従弟が」
高氏はハタとその考え顔へ、片手を当てた。頬が熱かったし、その辺の薄らあばたを、姫に見られたくない気もしたのである。
「いや。それだけではお分りあるまい」
守時が笑って助言する。
「――先頃の一夜、上杉どのが、ぜひ、この小盲人の琵琶を聞いてやってくれいと、ここへ連れてみえた愛らしい小法師がおざった。それが縁となって、以後、登子とその覚一とは、大の仲よしとはなった。