Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Lisez 私本太平記(一) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 246 214 caractères · 495 écrans

Aozora Bunko

「さては、ほんとか」

と、驚いたさまだった。

噂はあっても、今日までのところ、おおむねは、

「赤橋殿と、足利家とのツリ合いでは」

と、まず疑い、

「わけてまた、なんの取り柄もない、どちらかといえば醜男な薄あばたの小殿などへ、なにを好んで、登子の君が嫁ぐものかよ。――特に、北条一族中でも、かがやかしい歴々のお家柄たる赤橋殿の妹君が」

と、多くは、一笑に付していたのである。

それだけに、事実と知ると「――兄守時どののお気も知れぬ」とか。「あんな美眉よい妹君を、選りに選って……」とか言いながらも、

「そうだ、さっそくお祝いに参じねば」

と、世渡りの如才は忘れず、鶴ヶ岡の赤橋邸へも、大蔵の足利家へも、それぞれ、ひきもきらぬ客だった。

赤橋家はともかく、足利家にこんな現象はめずらしい。

当主貞氏は長い病身で、営中でも忘れられていた程だし、一子高氏は凡庸と見られて、久しく客も稀れな門だったのだ。それが、執権の近親赤橋どのの妹聟となると分ったのである。俄然、衆目はちがって来た。

しかし、当の高氏は、いっこう違ってきた風もない。日が迫っても、出仕はしていた。そして相変らず、ぶらんぶらんと馬まかせの弛手綱で、夕陽の頃には、武者所から退がって来た。