Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Lisez 私本太平記(一) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 246 214 caractères · 495 écrans

Aozora Bunko

「ではまだ、ずっと東の方の道よな。さもあろう、女子と盲づれの足では。……いや、率爾を申した。御免」

松明の幾ヒラめきは、すぐ山蔭の道へ消えて行った。つづいて後から、戛々と、馬を曳いてゆく響きもする――。

それを見送りすますやいな、藤五はピョンと起ち上がった。だが膝ぶしは顫え、瞳孔はさだまらず、前よりもまたひどく、ひょろついていた。

一色党の六、七名は、たちまちのまに、そこの一平地で、一軒の山小屋と、また小屋から少し離れた所の地上に、一個の死体を見いだしていた。

いうまでもなく、羽鳥八郎太の死骸。

「すわ、何かあったぞ」

人々は、途中気がかりにして来た予感を眼に見せられた心地であった。血の香に吹かれた面を颯ッと、そよがせ合って。

「小屋は見たか。二つの寝小屋は、人はいないか」

「いない。……怪しいのは、さっき、流れで水を呑んでいた男だが」

「あれを加えると、この死骸の従者と、二人になる。従者は三名と伺っていた。もう一人を探せ。そいつが、草心尼さま母子を、どこぞへ、かどわかした者かもしれぬ」

「そうだ、死骸も温い。まだ時たったことではない」

そこへまた、東の道からも、数名が来合せた。