Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(一) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 246 214 caractères · 495 écrans
「主従も信じ合えず、同僚も信じ合えず、あの者たちを見ても、恐ろしい世になったものよの」
「でも、死んだのなら、可哀そうな気もします。私たち母子の供に従いて来なければ、なんの悪心も起さなかったことでしょうに」
覚一は妙に沈んで言った。
尼にはちょッと解せない心地だったが、よく考えてみると、これがこの子の天性だったとうなずかれた。仏心の何のというそんな大人びた情や智でなく、感じたままに、荒涼な世と人の死が悲しまれての呟きに違いない。
生来、そういう子なればこそ、琵琶一筋に生きようなどと、世間の子とも違った考えを早くから持ったものであることも、母の彼女が、たれよりもよく知っていたはずだった。
「おおういっ。ここだ、みな来いっ」
どこかで、ふいに大声がしたのである。――と思うと、堂の附近へ、俄に、がさがさと人騒めきが駈け寄っていた。
「見つかったか」
「む、相違なくそこの破れ堂だ」
「や、あの内にか」
「ふと、お経誦の細々な声。……先刻からここで屈まり聞いて、やれやれと胸なで下ろした」
「なぜ早くに知らさぬのだ。おれたちは、血まなこなのに」
「いやいや、得態もしれぬこの同勢で、事も俄に、荒々と、お驚かせしてはなるまい。