Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(一) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 246 214 caractères · 495 écrans
散所屋敷とよぶよりは、むしろ、石川城といった方がふさわしい。
あるじの散所ノ太夫義辰は、みずから大玄関に出迎えていた。よくある土地の長者とは、こんな態の人物をいうのだろう。――五十がらみの、でっぷり肥えた体も、唐物ずくめの衣服や身かざり派手派手と、毘沙門天の像でも歩いて出て来たようだった。
眉は植えたものみたいに硬く、色の黒さも、乾漆の仏像肌を想像させる。――それに、もひとつの特徴は、左の顎のあたりに瘤がある。しかし妙なもので、散所ノ長者の顔にあると、瘤までが、この豪勢なお大尽の福相には、あっておかしくないもののように見える。
「太夫。いつもお旺だな」
日野俊基は、客殿のしとねに、くつろぐやいな。
「久々だが、会うたび、お若うなって見ゆるの。御子息の豊麻呂どのにも変りないか」
「はっ。お引立てのおかげを以て……」
と、義辰は、折るのにもくるしそうな体を曲げて、客へ、貴人の礼をとった。
「かくのごとく、一家皆、息災に暮らしおりますが、平常はつい、洛中のお館へも、心ならず、ご不沙汰のみを」
「いやいや、それがよいのだ。……この身も、知っての通り、鎌倉喚問の厄に遭って、あやうく死をまぬがれて都へは返ったものの、あれ以後は、わが家の門を十歩も出れば、はや背後には、放免(密偵)臭い男が尾いて来おるような有様でな――。