Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(一) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 246 214 caractères · 495 écrans
なぜならば、絶対に公表できない原因で、しかもまだ三十代に、あえなく自殺した君だからである。
ところが。――その家時の血書の“置文”(遺書)というものが、菩提寺鑁阿寺のふかくに、家時の霊牌とひとつに封ぜられているということを、重なる家臣は知っている。
――で、又太郎高氏が元服報告の日にも。「――もはや御元服なされた上は、お見せすべきだ」という臣と。「――いやまだ時節でない。もっと若殿が御成人の後ならでは」という臣と、両者二説にわかれたため、その折にも、それはついに開かれずにしまったほど、足利家にとっては、なにしても重大な意味をもつ秘封でもあるらしかった。
「……そうだ、わしとしたことが、うかと、あの日のことは忘れておった」
つぶやいて、面をふかく沈めていた又太郎は、やがてのこと、その顔と共に、全身も上げて突っ立った。
「出立するぞ。経家、駒の支度をいそがせろ」
「はっ」
「不覚よ、今日まで見ずに過ぎていたのは。……帰国の上は、すぐにも、鑁阿寺の置文をこの眼で拝見せねばならぬ」
経家も立ちかけたが、妙源と顔見あわせると、共に姿を揃えて、又太郎の足もとに、もいちど平伏して言った。