Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(一) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 246 214 caractères · 495 écrans
そしてもっと大きな視野へその眉は向っていた。この横着さは、彼がまだ元服前から、なんのかんのと、折々に禅でいためつけられて来た那須の雲巌寺の客僧、疎石禅師の鉗鎚のおかげといえぬこともない。
「や。……さっきの武者が」
「なに。あの群れの中に」
「見えまする。しかも、何やら佇み合って」
犬上郡の野路をすぎ、不知哉川(昔はいさら川)を行くてに見出したときである。華やかな旅装の一と群れが河原に立ちよどんで、頻りとこっちを振向いていた。
どうします?
二の足をふむ右馬介のたじろぎも、又太郎には眼の隅のものでもなかった。駒脚はまっすぐにそのまま不知哉川の河原へ近づいている。
先はこっちを待っていたに違いない。さいぜんの黒鹿毛に乗った侍は、そこの群れを一人離れて、すぐこなたへ寄って来た。
が、前とは異なって、ていねいに。
「あいや高氏どの。つい今ほどの失礼は、平におゆるしあれよ。連れの御方に追いつかんと、上わの空なるぶざまでおざった。ははははは、それにさぞ、御不審でもおわせしならん」
歯ぐきを見せて意味もなくよく笑う男である。装いなど、ひとかどの者とも見えるに、又太郎にはその人柄に何かいやしさを覚えずにいられない。