Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Lisez 私本太平記(一) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 246 214 caractères · 495 écrans

Aozora Bunko

それはたとえようもない寂寥を二人のあいだへ呼ぶように、シュク、シュク……と途絶えのない嗚咽だった。

責められているかの如く、

――なにを泣く。

高氏は刺々と心でののしる。

あッちへ行け。

消えてなくなれ。

しかし、それはじぶんの慚愧へ向って言ったことばでもある。彼の過失が、そのまま藤夜叉にも同等な過失だったと言いきれるほど、むごい彼でもなかったし、口を藉るべき酒気もいまは失せていた。殊には、遊女でもない小むすめ。ただ寒々と、誰へでもない腹がたつばかりだった。

「藤夜叉」

怺えかねて、

「もうよせ、泣くのは」

そばへ寄って、かかえ起した。どこもかも触れるところが濡れている重さだった。

「わしがわるかった。……たのむ、このことはたれにもいうなよ」

「……し、しりません」

「告げる気か」

「い、いいえ」

「では早く寝屋へ戻れ。人が来るといけない」

「いやです」

藤夜叉は盲目的に彼の袖と襟とを、双手でつかんだ。指には女の爪があった。

当惑と、満足と、ふたつの相違した感情の絡まりが、高氏のなかでまた心の位置を迷わせた。

「なぜ嫌というのか。こうしていれば、すぐ夜が明けよう。