Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(七) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 330 262 caractères · 662 écrans
尊氏はうすら笑って。
「そちには、用が多いぞ。いつでも廂ノ間へひかえておるようにいたせ。かかる折、執事のそちがどこへ行っておった」
「てまえならではなるまいかと存じ、佐女牛まで一ト鞭あてて行てまいりました」
「道誉の許か」
「さようで」
「よく気がついた。気がかりはあの男のうごきにある。いたか」
「おりませぬ」
「参内か」
「でもございませぬ。はや佐女牛は無人同様で、昨夜、国元の伊吹へひきあげたと、留守の者が言いおりまいた」
「奴。さすがだな」
「そして、この一書を、足利殿へと、あとの家臣に託して行ったよしにござりまする」
文面を一読、尊氏は苦笑をみせ、それなりで黙っていた。
「殿」
と、師直は膝をすすめ、
「道誉が何を書き残しておりますので」
「見るがよい。――このさい二心なし、と道誉がわざわざこれに証判しておる。そして、わしの東国出勢を、途中の伊吹にてお待ちせんとも書いておるのだ」
「はアて?」
師直はうめいた。誇張したあきれ顔をその下に作って。
「まだ、ご当家の出勢は布令てもいず、朝廷もまた例の、殿がお願いの件を、おきき入れはなく。……いやその奏請は蹴られて、征夷大将軍の任命は、成良親王へご決定と、公布がみられたばかりなのに」