Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(七) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 330 262 caractères · 662 écrans
私本太平記
野分のあと
野分のあと
敗者の当然ながら、直義の三河落ちはみじめであった。
淵辺伊賀守の斬り死になどもかえりみてはいられず――敵に追われどおしで、とくに手越河原では残りすくない将士をさらにたくさん失い、今川、名児耶・細川、斯波など一族子弟の討死も幾人かしれなかった。
ついに、ここでは直義も進退きわまったとみてか、
「腹掻き切って、左兵衛ノ督(兄尊氏)どのへお詫びせん」
といったのを、
「何の、ここはお討死のつぼにあらず。いかなる恥をしのんでも、生きてこそ」
と、今川範国のいさめに思いとまって、苦闘に苦闘をつづけ、やっと川を渡りえたとつたえられている。だがこの段はさて、どんなものだろうか。
直義の性格として、めったに斬り死にだの自害だのとは言いだしはしまい。もし事実なら、おそらくまわりの将士にさいごの決意を奮わすための指揮者の血相をみせたまでのものではなかったか。
なぜなれば、彼には、彼の身ひとつ以上な重任が考えられていたはずである。――鎌倉から救出して連れていた成良親王・みだい所の登子・またとくに若御料(尊氏の一子・千寿王)らの足弱をおいて――そうした短気はおこしえないところであった。