Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

Lisez 私本太平記(七) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 330 262 caractères · 662 écrans

Aozora Bunko

ところが、なおまだ、待っても待っても、ついにこれへ御参加なかった、皇室のお方の一部があった。

本院の光厳上皇と、新院豊仁との、おふた方である。

この持明院統の皇は、さきに尊氏へたいして、尊氏が請うた宣旨を降下し、錦の旗をも与えていた。

そのことを、後醍醐が、御存知でないはずはない。

だからとくに今日は、監視をきびしくし、太田ノ判官全職をして、はやくから御所をかこませ、いなやの仰せにかまわず、叡山へお供するようにと、すでに内々の御厳命であった。だのに、とうとう、これへはお見えにならずにしまった。

では、どうしたのかというに、本院(光厳上皇)には先ごろから少々御不予(病気)とのことで、太田ノ判官もぜひなく、御門の表でお出ましのしたくを長々と待っているうちに、いつか御所の内では、もぬけの殻となっていたものだった。

尊氏にとっては、持明院統の光厳上皇こそ、かけがえのない御方である。

足利方の洛内入りが大事をとられていたのも、一に上皇のお身が気づかわれていたからにほかならない。

それだけに。現朝廷の監視下に注意人物とされていた光厳の御脱出は、よほど困難だったはずである。