Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(七) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 330 262 caractères · 662 écrans
――だがそれを、清水寺へ納めたすぐあとでは――もう自己の分身のような直義へも、幕下の諸将へも、ゆめ、そんな本意は、顔の隅にも出しておけなかった。
彼らの眼は血走ッていた。彼らの手は血ぬられていた。いよいよ、食うか食われるかの、きのうきょうの戦況だった。
「ただいま、彼方に」
と、近侍が告げた。
「師泰、帯刀の両将が、勝戦のよしを言上のため、坪の内へ来て、さしひかえておりますが」
「直義はいないのか」
「けさから鞍馬口方面の戦陣へ、お駈け入りでございます」
「いまゆく」
尊氏は奥を出た。そして千手院の北ノ坪(庭)へ降りて、そこの陣座へ腰をかけた。
あの願文を清水寺へ納めてからの直後の日である。
――この世は夢。ただ道心を給び給え――。と、祈る彼も本心なら、ここの床几で、軍事を聞くときの彼も本心だった。
入れかわり立ち代り、伺候する諸将はみな戦場の血みどろで生々しい。窮極はどうあれ、尊氏もここでは自分を嘘の皮膜でくるんではいられない。つまり彼は、極限の本心から極限のべつな本心へと、変っていた。その振幅にうその意識はないのである。両面、どっちも一つ尊氏だった。
「――今暁、一手は鳥羽畷にて。