Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(五) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 252 330 caractères · 505 écrans
私本太平記
大江山
大江山
不破から西は、一瀉千里の行軍だった。この日すでに、足利軍五千は、湖畔の野洲の大原をえんえんと急いでいた。
「都へ着いても、おそらくは食糧難か」
と、三河仕立ての輜重隊をひきつれていたことである。たくさんな牛車や馬列はいつもおくれがちで、ムチを振る足軽たちは、顔まで泥のハネにしていた。
伊吹では、道誉が、加盟の証にと、自己の兵二百を加勢にさし出していたし、そこの難関をこえてからの高氏は、まったく、何の屈託もなさそうに見えた。いま行く道こそこの人の本来の面目であったように、しきりと前後の将へ、馬いきれの中で、はなしかけたりしていた。
「暑いなあ。このぶんでは、いくさは夏戦になるだろうよ。なあ直義」
「は」
「あすからは、夏支度にかえようわい。伊吹とはまるで季節がちがうようだ。都の内は、なお暑かろう」
「ことしは閏のうえ、はや四月も半ばですから」
「暦のうえも忘れて来た。おおあれは三上山、そのてまえは鏡山だな。するとここらは天智天皇が御猟のあとか」
「さればで」
と、いったのは、直義と駒をならべていた今川範国で、言下に、万葉のひとつを、駒ひびきのあいだで、高吟していた。