Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(五) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 252 330 caractères · 505 écrans
稲村ヶ崎
「さて?」と、義貞も足ぶみしたことにちがいない。
だから彼の本陣を仮粧坂とは称んでも、じっさいには仮粧坂まで進出できず、当夜まだ、葛原ヶ岡の西で形勢を見ていたものとおもわれる。
そこへ、左翼軍から、
「お味方は敵将赤橋守時を討ちとって、はや小袋坂をまえにしております」
との捷報が入った。
義貞は、もうわが物と思ったろう。夜明けへかけてはまた、諸方の火の手もますますふえ、くるまれた鎌倉の府の屋根は、海までも、薄墨いろの底だった。
ところが。その十九日のひる、様相は逆転しだした。一大凶報が入ったのである。
浜手へ向った右翼、大館宗氏の一隊が、この朝の引潮どきを狙ッて、稲村ヶ崎の干潟を伝い、敵中突入への“抜け駈け”に出たのであった。
奇功をそうした大館勢は、府内へあばれ入って、前浜の民家に火を放った。鎌倉じゅうは為にどよめきを起したが、当然な猛反抗に、大将大館宗氏が、まず稲瀬川のへんで斬り死にをとげてしまい、そのほか、部下の多くも討たれたので、残余の兵は、からくも霊山ヶ崎の上へ逃げ上った。とはいえなお生き残りの七、八百人は完全な敵前の孤児になっているという報であった。