Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(五) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 252 330 caractères · 505 écrans
陀羅尼院の森はまっ赤に映え、火の粉が降り、黒けむりの下から逃げ出してくる徴税使の兵が、すぐ目のまえの辻や畑で、次から次と、新田家の武士の手で殺されていた。
「わあっ、お館の衆だ、お館がお怒り召された!」
領民は快を叫んだ。それを自分らのためになされた報復かのように見たものらしい。
逃げる者は逃げ、逃げおくれた兵はあちこちで殺され、陀羅尼院の火もまた、まもなく黒ずんでいた。
「ほぼ終ったな」
床几の、義貞は微笑をみせ、
「つないである奴をこれへ曳いて来い」
と、かたわらの武者へむかっていいつけた。
世良田ノ館は、すぐ森隣りであった。余燼はもうもうと、ここの庭をもけむらせている。
その、けむりの中でさえ、彼のすがたは、キラめかしかった。家重代のよろいを着、美刀を横たえ、かぶとは、床几わきの小姓武者に持たせている。
彼ばかりでない。家中の士全部もみな身を鎧って、足には新しい武者草鞋の緒をしめ、家の内もそれで歩いていたのだった。その様子でもわかるように、はやここには婦女子ものこさず、館一切を捨てて立つ準備がなされていたのらしい。
「おん前に」
やがて、二人の縄付きが彼のまえに曳きすえられた。