Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(五) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 252 330 caractères · 505 écrans
そして直々、訴人を見た。
昼、すでにこの者の口上は、つぶさに法印からお耳へとどいているのである。あらためてご自身、聴取の必要もないのだが、事は重大であり、宮のご気性も、それではお気がすまぬらしい。お好きといっては語弊もあるが、諸事、もの珍らなことには、とかく臨まれたがるふうもあった。なにせい、天皇の御子という高貴と、征夷大将軍なる武威とがある。どんな人間も唯々として、一令にうごき、目のまえに慴伏するなどのことは、たまらぬ御快事ではあったのだろう。
そのくせ、ちかごろのことでもないが、宮のつかわれる用語もまったく随身の山武士や浪人なみの粗野なことばに変っている。軍を統御するには宮廷風の殻を脱いでその体臭へ御自分からも同化してゆかねばならぬと努めておられるものだろうか。
このてん武家と公家とはあべこべである。都へ入ると武将はみな一様に大宮人の生活や粧いをまねしたがり、堂上の若公卿ばらは、逆にかれら武人の鞍上の姿だの、小鷹を据えたり、弓矢を飾り持つ風俗などに大かぶれの有様なのだ。それが建武の往来に描かれ出した時世粧の特徴みたいなものだった。
とにかく、宮はつねに意気軒昂たるもので、言語もそれそのままに。