Classiques japonais avec furigana
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えんようき
艶妖記
山本 周五郎
Lisez 艶妖記 (えんようき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 18 761 caractères · 38 écrans
母を葬むった夜、八百助は折からの宵月をたよりに洞瀬山へ登り、例の曾古津様の祠へ捻じ込みにいった。
「いったいあなたはどんな神なんだ」
彼はこうひらき直った、
「おっ母さんが子授けの願を掛けたとき私を生ませるくらいなら、生まれてから後も少しは責任があるはずだ、私がこんな躯になったのに知らん顔をするばかりか、あんな善人のお父つぁんやおっ母さんを見殺しにし、家がめちゃめちゃになるのも黙って眺めている。こんな無責任な怠けたことでかりにも神様と云われる者が恥ずかしくないのかい、今夜はおまえさんの肚をききにきたんだ、それによっては火をつけて祠もなにも燃してしまうからそう思ってもらおう」
そして彼は祠を睨んで坐り込んだ。頼るに秩序なく訴えるに法も律もなくすがるに道徳人情なく、しかも落魄窮乏のどん底に追い詰められたとき、人間は赤児のように聞分けなく奇跡の顕現を熱望するものだ、而うしてその熱望がしばしば奇跡を招来し得ることは青史の証明するところである。――刻は経っていった、だが曾古津神はぽつりとも答えない。八百助はついにこう云った、
「よーし、おまえさんがそんなつもりならもうなんにも頼まないよ、たったいま焼き払ってしまうからそう思うがいい」