Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 鬼の面

野村 胡堂

Lisez 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 082 caractères · 257 écrans

Aozora Bunko

しかし俳諧、弁舌、男前、わけても金の力では大井久我之助、鯱鉾立をしても吾妻屋永左衛門に及ぶ筈もなく、それを知り悉しているだけに、泥んこの中に引っくり返った永左衛門、急に自信を取戻して来ました。

「暗討は卑怯だろう――何んの怨みで、この私を――」

永左衛門は建物の袖を木楯に、必死の声を絞りました。日頃金の力と男前と、弁舌と才気で、浪人大井久我之助を圧迫して来た町人吾妻屋永左衛門は、腕は少々鈍くとも、得物が一本ありさえすれば、この男にムザ/\敗ける気は無かったのです。

「卑怯? 卑怯は其方だ」

「何を」

「金の力に物を言わせて、拙者が言い交した女を横取りしたのは、其方では無いか」

大井久我之助は、一刀を構えたまま、ジリジリと詰め寄るのでした。

「あ、その事か」

吾妻屋永左衛門、ハッと思い当ったのです。

相手は女故に禄も家も捨てて、我儘気随に暮して居る浪人、暇はあるにしても、恥も人格も無い人間だけに、女出入の怨みを怨刄を合せた暗討の一と太刀に、人知れず片付けようという腹だったのです。

「覚えが無いとは言わさぬぞ」

「で、素手の町人を斬る気になったのか」

吾妻屋永左衛門は、相手の切っ尖を除けながら、隙があったら、ツイ鼻の先の自身番に駆け込む気でいるのでした。