Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 157 440 caractères · 313 écrans
湯島の吉は飛び出しました。下手人の足跡らしいものをかぎつけると、それを手繰らずに居られない、岡っ引本能にかり立てられたのでしょう。
「それじゃ宇八の方は吉兄哥に頼んで、お前はこの小僧の死骸を、佐久間町の親許に送り届けてくれ」
「ヘエ」
「おれは大急ぎで調べて置きたいことがある」
平次は何を考えたか、人混みを分けて、春の夜のやみの中に姿を隠してしまいました。
「おーい、この子の引取人は来ているのかえ」
「ヘエ、ヘエ、私は佐久間町の家主仁助でございます。これは元吉の姉のお雪で」
八五郎の声に応えたのは、六十近い禿頭の老人で、その声にハッと顔を挙げたのは、死骸の側にしゃがんで、ヒタ泣きに泣いていた若い娘でした。
十七、八にもなるでしょうか、女の美しさが漸く成熟しかけておりますが、骨の髄までしみた貧しさがその美の完成を妨げて、何んとなく蟲食いの果物のような感じのする娘です。八五郎の指図で、人足達は戸板を一枚持って来ると、小僧の死骸をそのうえに載せ、提灯の黄色い灯りにわびしく照らされながら、夜更けの街を佐久間町にたどるのでした。
姉娘のおえつの声が顔を覆ったボロボロの袖口からもれて、八五郎の胸を痛めます。