Classiques japonais avec furigana
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めいせつじじょでん
鳴雪自叙伝
内藤 鳴雪
Lisez 鳴雪自叙伝 (めいせつじじょでん) de 内藤 鳴雪 (ないとうめいせつ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 192 693 caractères · 377 écrans
そこで、大阪と讃岐の間を往来する金比羅参詣の船へ乗るが好いというので、それへ乗ることにしたが、その船の出る讃岐の丸亀までは三十里近くの陸を行かなければならない。しかしいよいよその陸路に向って発足する事になった。折悪く私は風邪に罹って少し熱があったが、そのために躊躇すべくもないので、宅を出た日は駕籠を雇い、雨を冒して讃岐街道の土屋という宿まで行って、そこから駕籠を返し、その夜はそこに一泊した。
ここは山中の部落で、夜は物淋しく、殊更慣れぬ宿りであるから久しく眠に就けなかった。そこで常々好きな書物か何かあれば見たいと想って宿の者に訊ねると、『こんな物がある。』といって、古本を一、二冊出してくれた。その中に三体詩の零本があったから、枕頭の灯を挑げて、『行尽江南数十程、暁風残月入華清』などという詩を繰返し繰返し読んでいる中につい夢地に入った。今でも三体詩中の詩を読む度に土屋の宿の寂寞を想起するのである。
その翌日は、一僕と共に私も草鞋掛で歩いて、やがて城下から十里ばかり隔った大頭宿に達した。そこから先はいよいよ他藩即ち小松領に入るので、一層心細い感を抱いた。