Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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おばけのしょうたい

おばけの正体

井上 円了

Lisez おばけの正体 (おばけのしょうたい) de 井上 円了 (いのうええんりょう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 74 925 caractères · 145 écrans

Aozora Bunko

かつて狐火や天狗火や幽霊火のことは聞いておれども、今見たる火はそのようの怪火ではなかろうと知りつつ、なんとなく疑懼の念が起こり、ことに真っ黒の物の見ゆるのは、どうしても化け物であろうと思った。あるいは、高山のことなれば熊でもいるのではあるまいか、もし熊ならば一層恐ろしいと思い、かれこれしているうちに、その黒き怪物が余の方へ向かって歩き出して来たから、これはたまらぬ、四十八手逃げるにしかずと心得、駆け出そうとする途端、先方より余に向かって呼びかけた。そのときようやく正体が分かったが、分かってみれば、枯れ尾花にあらずして普通の人間である。その次第は、箱根町の電信局の脚夫が、電報を近在へ配達したるその帰途に、大雨風のために提灯を消され、空き小屋にたたずみてマッチをつけていたのであった。余が怪火と思ったのはその光であって、風のためにマッチをつければすぐに消え、またつければ消えるので、再三してもよくつかぬ。そこへ余の提灯が見えたから、彼はその火をもらおうと思って待っていた。しかるに、余の方では気味悪く思って足を進めぬから、彼は待ちかねて余の方へ向けて歩き出したので、そのとき、「ドウゾ提灯の火をいただきたい」