Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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へいけがに

伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集

岡本 綺堂

Lisez 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 203 094 caractères · 411 écrans

Aozora Bunko

さすがの本多もきょうはおとなしく黙っていた。田宮は半病人のような顔をしてぼんやりしていた。夕方になって、警官がふたたび帳場へ来て、なにか頻りに取り調べているらしかった。警察の側では女学生の死について、何かの秘密をさぐり出そうと努めているのであろう。それを思うにつけても、遠泉君は一種の好奇心も手伝って、なんとかしてその真相を確かめたいと、自分も少しくあせり気味になって来た。

その晩は元子と柳子と遠泉君と本多と、宿の女房と娘とが、亀江の枕もとに坐って通夜をした。田宮は一時間ばかり坐っていたが、気分が悪いといって自分の座敷へ帰ってしまった。元子と柳子とは唖のように黙って、唯しょんぼりと俯向いているので、遠泉君はかれらの口からなんの手がかりも訊き出すたよりがなかった。こうして淋しい一夜は明けたが、東京からの引取り人はまだ来なかった。

徹夜のために、頭がひどく重くなったので、遠泉君はあさ飯の箸をおくと、ひとりで海岸へ散歩に出て行った。女学生の死はこの狭い土地に知れ渡っているとみえて、往来の人達もその噂をして通った。遠泉君は海岸の石に腰をかけて、沖の方から白馬の鬣毛のようにもつれて跳って来る浪の光りをながめているうちに、ふと自分の足もとへ眼をやると、かの五色の美しい蟹が岩の間をちょろちょろと這っていた。