Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lisez 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 203 094 caractères · 411 écrans
二
二
双ヶ岡の庵へ突然にたずねて来て、徒然草の作者に文を書けと迫っている美しい女は、将軍足利尊氏の執事としてこのごろ都に威勢を揮っている高武蔵守師直の娘で、小坂部というかれが名は雲の上までもきこえていた。武家が跋扈の時代であるから、陪臣の師直の娘も内外の者に姫と呼ばれて、かれは栄耀のあるたけを尽くしていた。その小坂部が供をも連れないで、ただ一人で兼好の庵へ忍んで来たのは、こういう事情がひそんでいるのであった。
かれの父の師直は塩冶判官高貞の妻に恋していた。この恋物語は、その当時の太平記の作者が玉をつらねた名文をもって委しく書き伝えているのであるから、今更あらためて注釈を加える必要もあるまい。しかしその相手が人妻である以上、たとい将軍家の執事の威勢でも、横車を押すこの恋は容易に成就しそうもなかった。彼は自分のもとに身を寄せている侍従という公家女房を使いとして、道ならぬ恋の桟橋をわたそうと幾たびか試みたが、塩冶の妻は見向きもしなかった。相手があくまでも情ないほど、師直の恋はいよいよ募って、色黒く骨たくましい坂東武者もこの頃は恋い死なぬばかりに思いわずろうている。