Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

へいけがに

伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集

岡本 綺堂

Lisez 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 203 094 caractères · 411 écrans

Aozora Bunko

かの小夜衣の事件以来、ひどく師直の機嫌を損じて、いつどんな祟りを受けるかと、落ち着かない胸をかかえて其の日を送っているかれの顔には、悼ましいほどの窶れを見せていたが、今夜はその顔の色が取り分け陰っていた。かれは顫え声でささやいた。

「姫上にはまだ御存知ござりませぬか。塩冶どの御運の末ももう眼の前になりましたように存じられまする。」

「とは又、なぜに。」と、小坂部はかれの顔をじっと見つめた。

「御存知ござりませぬか。」と、侍従はかさねて念を押した。「近々に討っ手を差し向けらるるとか申しまするが……。」

「それは定か。」と、小坂部の方でも念を押した。

その狡そうな眼と聡しげな耳とを絶えず働かせて、内外のことを何かにつけて探り出そうとしている、古狐のようなこの女房が、自分よりもひと足さきにこうした機密を嗅ぎ出して来たのを小坂部は不思議にも思わなかった。それをどうして知ったかと押し返して訊くと、侍従は若侍の亀田新九郎の口から聞き出したと答えた。分別のない若侍は却って古狐の罠にかかって、大事の機密をうかうかと洩らしたらしい。それにしても何ゆえ塩冶をほろぼすのかと小坂部は一旦疑った。