Classiques japonais avec furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lisez 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 203 094 caractères · 411 écrans
眇目の男
一
かれは事の成り行きを気遣って先刻から其処らにさまよっているらしかった。
「侍従どの。」
小坂部はかれを呼び近付けて何事かをささやくと、侍従はひたいを皺めて少しく難儀らしい顔を見せた。
「暗い夜でござりまする。女子ばかりでは途中の程も……。」
それも無理ならぬ注意のように思われたので、小坂部もしばらく思案していたが、やがて又かれの耳に口をよせると、侍従は心得顔にうなずいて、すぐに表口の方へその姿を消した。小坂部は一旦自分の部屋へ帰って、忙しそうに身支度をして更に表口へ忍んでゆくと、そこには侍従が待っていた。
「采女は……。」と、小坂部は小声で訊いた。
侍従は無言でうなずいて、姫の手をとって忍び出ると、入口に焚かせてある夜の篝火も強い木枯しに吹き消されたらしく、暗いなかを探るように出てゆく二人の女のうしろ姿を誰も見咎める者はなかった。
眇目の男
一
小坂部と侍従と采女と、三人はあとさきにつながって、木がらしの中を急いで行った。この頃の京の町は人気が穏かでないので、日が暮れると巷に斬取りの強盗が横行する。その噂におびやかされて、まだ宵ながら往来は途絶えて、戸を閉てた家々に燈火のかげも洩れなかった。