Classiques japonais avec furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lisez 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 203 094 caractères · 411 écrans
「お詞ではござりますれど、一旦こうしてお見受け申したる以上、いかにおむずかりなされても、荏原権右衛門、唯このままには戻れませぬ。くどくも申す通り、これは主命。権右衛門が口上は殿のお声とおぼしめされて。」
「そのお声が聞きとうない。」と、小坂部は呪うように言った。「そのお声は悪魔の声じゃ。塩冶の奥方はそれで亡ぼされた。直きじきにお手こそ下されねど、侍従もそれで身をうしのうた。しかし小坂部はそうはなるまい。父上がなんと仰せらりょうともわたしは戻らぬ。兄上がいかに叱らりょうともわたしは帰らぬ。」
「して、これからいずれへ……。」
「それは言うまい。どこへ行こうとわたしの勝手じゃ。さあ、邪魔せずにそこを退きゃれ。」
小坂部は自分と向かい合っている権右衛門に鋭い一瞥をくれて、そのままそこを通り抜けようとするのを、権右衛門はあわただしく遮った。
「では、どうでも御帰館のおん供を権右衛門に仰せ付け下さりませぬか。」
「くどいことを……。ならぬ言うに……。采女、来やれ。」
押して通ろうとする二人の前に、権右衛門はまた立ち塞がった。彼は内心に小坂部を恐れていながらも、ここで見すみすの獲物を取り逃がすことは出来なかった。