Classiques japonais avec furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lisez 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 203 094 caractères · 411 écrans
その不和の原因もやはり師直の讒誣中傷に因ると伝えられていた。直義はわが身のあやういのを恐れて、一旦は都を落ちのびたが、さらに大軍をあつめて攻めのぼって来たので、尊氏は播磨路まで出てそれを邀え撃つことになった。師直も無論に主君と共に出陣した。
姫山の天主閣の上では、小坂部が高い窓の隙きから夕空を眺めていた。それは正平五年二月の半ばであった。折りおりに下界の様子をうかがいに出る眇目の男は、頂上まで登って来て得意らしく報告した。
「姫。いくさは眼の下にひろがる。尊氏直義の兄弟が戦うのじゃ。高師直、その弟の師泰、いずれも尊氏にしたがうて出陣したという。さりとは面白い勝負でないか。」
かれら悪魔に取っては確かに得意の時節でなければならない。小坂部もほほえみながら聴いていると、春もまだ薄寒い夕暮れの風が天から吹きおろして来て、高い天主閣の甍をゆすって通った。いつもの黒い雲の影が常よりも大きく鮮かに見えた。小坂部は口の中で何かの呪文を唱えた。
あくる日の合戦は、尊氏方の惨めな敗北に終った。大将の尊氏はすでに自害と覚悟を極めたほどであったが、幸いに直義との和議が整って、尊氏は生きた。