Classiques japonais avec furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lisez 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 203 094 caractères · 411 écrans
それがせめてもの仕合わせ。お前さまも……。」
長巻を地に伏せて、師直は雨の中にべったりと坐った。
「小坂部。ゆるしてくれ。助けてくれ。お身にそれほど不思議の業通力があるならば、父が一生に一度の難儀を救うてくれ。頼む。救うてくれ。」
「なりませぬ。」と、小坂部は冷やかに答えた。
「なぜ成らぬ。」と、師直は憫れみを乞うように掻き口説いた。「父が手を下げて、これほど頼むというに……。娘とは思わぬ。救いの神じゃ。どうぞ免して命だけは……。」
師泰も口を添えた。
「のう、小坂部。父と叔父とが大事な際じゃ。むかしの恨みは捨て置いて、今度だけは……。わしも共々に頼む。肯いてくりゃれ。」
「なりませぬ。」
同じ返事が繰り返された。
「さりとは無慈悲じゃ。」と、師直は怨むように言った。「たとい過去はどうあろうとも、お身と我とは肉身の親子でないか。その親がこれほどに縋って頼むに……。」
「親といい、子というはこの世のこと。わたくしの棲む世界ではそのようなことは知りませぬ。その掟を破って、こうして尋ねて来たのは、まだしも親を忘れぬわたくしの志、その上に何かと望むはお前の無理というもの。