Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
よるのこうず
夜の構図
織田 作之助
Lisez 夜の構図 (よるのこうず) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 62 068 caractères · 125 écrans
冴子はさっきから信吉の方を見ていたらしい。
「こっちへいらっしゃいません?」
冴子の眼はふと信吉を誘っていた。
「奥役と喧嘩して帰ってしまえば、もうあの女優と話す機会もなくなってしまう」
信吉はふとそう思った。
「喧嘩はあと廻しだ」
信吉は冴子の方へ寄って行った。
端の椅子に掛けていた冴子は、にっことして一椅子横へ移った。
舞台では主役の女優が、
「そんな恥かしいこと言っちゃいや。あたし逃げ出したくなるわ」
と、信吉が書きもしなかった歯の浮くような甘い科白を言っていた。
「逃げ出したいのはこっちの方だよ」
信吉はそう言いながら、冴子があけてくれた椅子へ、並んで坐った。その意味がわかったのか、冴子は微笑して、
「随分びっくりなさったでしょう。こんな場面がはいっちゃって……実際ひどいわ」
「上演をやめて貰いたいくらいですよ。――でもまア、新米らしく大人しく黙っているか。どうせ商業劇団に書いたのがそもそもいけなかったんですよ」
「田村先生も同情してらっしたわ。折角の作者のデヴュに気の毒だって」
田村先生とは演出家の田村礼介のことである。田村はもと左翼劇団の演出家であり戯曲のほかに小説も書き、劇壇より文壇で有名であったが、思想運動の嫌疑で検挙され、保釈出獄以来執筆は許されず、匿名で「演劇集団」