Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

よるのこうず

夜の構図

織田 作之助

Lisez 夜の構図 (よるのこうず) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 62 068 caractères · 125 écrans

Aozora Bunko

感覚的に迫って来なければ、何にも判らぬ男なのだ。いや、判っていても、判らぬふりをするのである。

女はあわれなものだとは、判っている。が、それをピシャリと感ずるのは女が涙を見せた時なのだ。

悲しいから泣く。しかし、泣けもしない時があるのだ。泣いている時は、女は案外自虐的な快感に身を委ねているのかも知れない。泣いている状態――いわば涙の生理というものを、たのしんでいることもあるのだ。しかし信吉はそこまで考えられない。怪我をした時、血が出たのを見て驚くようにうろたえるのだ。

「どうしたの……? なぜ泣くの……?」

信吉は伊都子の顔を覗きこんで、なだめる姿勢になった。こんな時、信吉はおろおろと、自責の念に足をすくわれて、落ちつかない。が、ふとひそめた眉のあたりに、冷酷な翳が走っているのは、何であろう。女に泣かれている状態から、一秒でも早くのがれたいというエゴイズムなのだ。

「いいえ、何でもないの」

と、伊都子の涙はすぐとまった。そして、

「――会えてうれしかったから、泣いたのよ。あたし、泣虫でしょう……? うふふ……。でも、うれし涙よ」

信吉はほっとした。

しかし、ほっとしたのは、伊都子が早く泣きやんでくれたからであった。