Classiques japonais avec furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
Lisez 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) de 中里 介山 (なかざとかいざん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 200 314 caractères · 398 écrans
竜之助は我知らず面を上げると、ややあちら向きになっていたお松の、首筋から頬へかけて肉附よく真白なのに、血の色と紅の色とが通って、それに髪の毛がほつれて軽く揺いでいる。
自分の膝には、お松の手が置かれてある――竜之助はそれを見る。涸れ果てた泉に甘露が湧く。竜之助も前にはお浜をこうして見て、心を戦かしたこともあった。
「おお怖い」
お松は、はじめて自分の所在を知った、その身はあまりに近く、その手が竜之助の膝の上にまであったのに気がついて、きまりが悪い――あわてて身を縮めた時に、竜之助が燃えるような眼をして、自分を見据えていたのでかっとしました。
「お前はいくつになる」
「いいえ」
お松は、つかぬ返事をする。
「静かになったな」
「あれ、また何か!」
お松は、床の間の方を見る。
「ナニ!」
竜之助は猪口を取落した。
お松がいま言うた九重の亡魂でなければ、竜之助の身の中から湧いて出る悪気。
この「御簾の間」は、時としてどこからともなく風が吹いて来る。
その風がしゅうしゅうとして梁を渡り、或るところまで来てハタと止まると、いかにも悲しい歔欷の声が続く。
誰も、そんなものを聞いたものもないくせに、そんな噂をする者はある、ホントにそれを聞いた人は、命を取られるのだという。