Classiques japonais avec furigana
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てんぐいわのさつじんま
天狗岩の殺人魔
山本 周五郎
Lisez 天狗岩の殺人魔 (てんぐいわのさつじんま) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 8 872 caractères · 18 écrans
平野氏は下男に、警察へ電話を掛けるように命じて置いて、二人の青年と共に庭から出て行った。――戸外は半メートル先も見えぬ濃霧だった。灯を持った京太郎を先に、道を左へ取って行くと五百メートル程して栗林に入る、……まだその辺に殺人鬼がいるかも知れぬしいつ何処から襲われぬとも限らぬので、平野氏は拳銃の安全錠を外し、引金に指をかけて八方に眼を配りつつ進んだ。
「彼処です――」
やがて京太郎が立止まった。
「あの巨きな松の木の処です」
「行って見よう」
「ぼ、僕は此処で待っています。僕には――迚も屍体を見る勇気はありません」
震えながら云うのを、祐吉は側からもどかしそうに、懐中電灯をひったくって、
「じゃア君は待ってい給え、伯父さん行きましょう。僕が先頭を引受けます」
「気をつけろよ、まだ犯人がいるかも知れぬぞ、――足許に注意して……」
遉に祐吉は緊張して、一歩一歩道を照しながら、教えられた松の木の方へ近寄って行く。と――その四五間手前で、一冊の小型な、汚い手帖が落ちているのをみつけた。
「何だ祐吉」
「手帖が落ちていたんです」
「つまらん物を、どうするんだ」
「なに、どうもしませんさ」